
「受託開発はやめとけ」って聞くけど、本当?
フリーランスやエンジニア界隈で、こんな言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
私自身も独立した当初、生活のために受託案件をいくつも引き受けました。最初は「自由な働き方ができる」とワクワクしていたのですが、数か月後には「これはちょっと違うかもしれない」と感じることが増えていったのです。
もちろん、受託開発が完全に悪いわけではありません。実際にスキルを磨いたり、クライアントとの関係を通じて成長できたりするメリットもあります。ですが、世の中で「やめとけ」と言われるのには確かな理由があります。
この記事では、私自身の体験談を交えながら「なぜ受託開発がやめとけと言われるのか」を深掘りし、さらにやるならどう工夫すべきか、そして他にどんな選択肢があるのかまで具体的に解説していきます。
- 受託開発について興味がある方
- 働き方で後悔したくない方
受託開発の現実:体験談と事例から見える落とし穴
「受託開発はやめとけ」と言われる背景には、実際にそこで苦労した人たちの体験があります。私自身も含め、周りのエンジニア仲間からよく聞くエピソードを交えて、そのリアルを紹介していきます。
1. クライアントの要望が際限なく膨らむ
ある案件で、最初は「簡単なWebサイト制作」という話でした。見積もりを出して契約したのですが、いざ進めると「やっぱりこの機能も欲しい」「デザインをもっと凝りたい」「納期はそのままで」と追加要望が次々に…。
気づけば当初の倍以上の工数をかけているのに、報酬はほぼ変わらないという状況になっていました。
これは決してレアケースではなく、受託開発の現場ではよくあることです。クライアントは「お金を払っているのだから」と考える一方、こちらとしては契約に縛られて言い出しにくい。結果として、サービス残業のような状態になりがちです。
- 工程が増えてしまう
- 契約に縛られる
2. 自分の裁量で進められる部分が少ない
受託案件は基本的に「クライアントの要望を実現すること」が最優先です。そのため、技術選定もデザインも、自由度は想像以上に低いのが現実です。
たとえば私はReactで進めたかった案件がありましたが、クライアント側が「昔から使っているから」とjQueryを指定してきたことがあります。効率や保守性を考えるとReactを推したかったのですが、結局は要望に従うしかありませんでした。
このように「最新の技術を学びたい」「自分の得意分野を活かしたい」と思っても、それが叶わないことが多いのです。
3. 納期プレッシャーとの戦い
受託開発の多くは「納期ありき」です。クライアントが決めたスケジュールに合わせなければならないため、どれだけ無理があっても調整を強いられるケースが少なくありません。
ある知人は、直前に仕様変更が入ったせいで徹夜続きになり、納品直後に体調を崩して倒れたことがあります。納期は守れても、自分の健康やプライベートを犠牲にしてしまうリスクが常にあるのです。
4. モチベーションが続きにくい
「自分のサービス」ではなく「人のサービス」を作っているため、どうしてもモチベーションが上がりにくいのも事実です。
特に、報酬が固定されている受託開発では「どれだけ頑張っても収入は変わらない」ため、やりがいを見失う人が少なくありません。
私自身も、納品した瞬間に「はい、次の案件へ」と切り替えなければならないサイクルに疲れを感じました。
こうした体験談からもわかるように、受託開発には独特の「しんどさ」が存在します。
では、なぜこれほどまでに「やめとけ」と言われるのか?次回はさらに踏み込み、具体的なデメリットを5つに整理して解説していきます。
受託開発をやめとけと言われる5つの理由

受託開発の現実を見てきましたが、それでも「多少大変でも仕事がもらえるならいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし実際には、多くのエンジニアが「受託はやめとけ」と口を揃えるだけの明確な理由があります。ここでは代表的な5つを取り上げます。
1. 単価の限界がある
受託開発は「時間と労力を切り売りするビジネスモデル」です。
たとえば時給5,000円で月160時間働いたとしても、売上は80万円。そこから税金や経費を引くと手元に残るのは決して多くありません。
さらにフリーランスの場合、営業や契約書作成、請求業務なども自分で行う必要があり、実働時間のすべてを開発に充てられるわけではないのです。
結果として「働けば働くほど疲れるのに収入は頭打ち」という状況に陥りがちです。
2. クライアント依存のリスクが大きい
受託開発では「クライアントがいなければ収入ゼロ」という不安定さが常につきまといます。
特に小規模フリーランスやスタートアップでは、1〜2社のクライアントに依存しているケースが多く、そのクライアントから契約を切られれば即収入が途絶えるというリスクがあります。
自分の力で案件を安定的に取り続けるには、営業力や人脈が不可欠であり、技術力だけでは生き残れないのです。
3. 成長が頭打ちになりやすい
受託開発は「クライアントの要望に応える」ことが最優先のため、最新の技術や自分の興味を自由に試す機会が限られます。
その結果、スキルが停滞し、気づけば市場価値が下がっている…ということも少なくありません。実際、私の周りでも「気づいたら同じような案件ばかり繰り返していて、成長を感じられなくなった」と言う仲間が多くいます。
- スキルアップに繋がりにくい
- 最新のトレンドに乗り遅れる
4. 資産が積み上がらない
受託開発で作ったものはクライアントの資産になります。どれだけ素晴らしいシステムを作っても、自分のものにはなりません。
そのため、時間をかけても「納品したら終わり」で、自分に残るのはお金だけ。ブログや自社サービスのように積み重なる資産性がないため、長期的には報われにくい働き方だといえます。
5. 精神的に疲弊しやすい
納期に追われ、クライアントの要望に振り回される受託開発は、精神的なストレスが大きいのも特徴です。
こうした状況が続けば、いくら技術が好きでも「もうやりたくない」と思ってしまうのも当然です。
ここまでの5つの理由をまとめると、受託開発は「短期的には仕事があるが、長期的には疲弊しやすい働き方」だということが見えてきます。
受託開発をやるなら絶対に押さえるべきポイント
ここまで「受託開発はやめとけ」と言われる理由をお伝えしてきました。
しかし現実問題として、フリーランスや独立したてのエンジニアにとって、最初に収入を得やすいのは受託開発です。
「やめとけ」とは言っても、受託をやらざるを得ない状況は少なくありません。
そこでここでは、私自身や周りのフリーランス仲間が実践してきた 受託開発で消耗しないための工夫 を紹介します。
1. 契約内容を明確にする
受託開発で最もトラブルになりやすいのが「追加要望」や「範囲の曖昧さ」です。
これを防ぐためには、契約段階で以下を明文化することが重要です。
- 開発範囲(どこまで対応するか)
- 追加要望が発生した場合の料金
- 納期の変更条件
- 支払いのタイミング
特に「追加要望=追加費用」というルールを明確にしておくことは必須です。これがないと、どれだけ頑張っても報酬が増えない「地獄の案件」になってしまいます。
2. 単価を安売りしない
フリーランス駆け出しの頃は「仕事をもらえるだけありがたい」と思って、相場より安い金額で引き受けてしまいがちです。
しかしこれは長期的に見て自分の首を絞めます。
なぜなら、安い案件を引き受けるとその実績が基準になり、次のクライアントにも低単価を提示されやすくなるからです。
「今のスキルなら1時間あたりいくらの価値があるか」を冷静に計算し、自分の最低ラインを下回る案件は断る勇気も必要です。
3. 複数クライアントを持つ
1社に依存すると、そのクライアントとの関係が悪化したときに収入がゼロになってしまいます。
そのリスクを避けるためにも、できるだけ 複数のクライアントを同時に持つ ようにしましょう。
私の場合、常に3〜4社から継続的に依頼をいただける体制を作ることで、1社から契約終了を告げられても慌てずに済むようになりました。
4. ポートフォリオや発信を活用する
安定的に案件を得るには「自分を見つけてもらう仕組み」が必要です。
そのためには、ポートフォリオサイトやSNSでの情報発信が有効です。
実際、私が受けた案件の半分以上は「ブログを読んで依頼しました」「Twitterを見て連絡しました」という形でした。
営業を頑張るより、発信を続けた方が効率的に良質な案件に出会えることが多いです。
5. 学びを資産化する
受託開発そのものは資産になりにくいですが、そこで得た知見を発信する ことで資産化できます。
たとえば「〇〇のAPIを使って実装した方法」や「△△でつまずいたときの解決法」をブログやQiitaにまとめれば、検索からの流入が増え、将来的に仕事の依頼につながることもあります。
このように工夫すれば「ただ消耗する受託」から「経験を次につなげる受託」に変えることができます。
受託開発以外の選択肢:自社開発・プロダクト開発・副業

「受託開発はやめとけ」と言われる最大の理由は、労働が資産にならないことでした。
そこで視野を広げると、受託以外にもエンジニアとして収入を得る方法はいくつもあります。ここでは代表的な3つの選択肢を紹介します。
1. 自社開発(企業に所属して働く)
まずは定番の「自社開発企業に所属する」という働き方です。
メリット
デメリット
自社開発企業では、サービスの成長とともに自分のスキルも積み重なっていく のが最大の魅力です。
受託で疲弊している人が転職して「もっと早く移ればよかった」と口を揃えるのはこのためです。
2. プロダクト開発(自分のサービスを作る)
「自分のサービスを作って収益化する」という選択肢もあります。
たとえばSaaS(サブスクリプション型のサービス)やアプリ、Webサービスなど。
メリット
デメリット
私の知人は、副業で作った小さなタスク管理ツールが徐々にユーザーを集め、今では安定した収入源になっています。
短期的には受託より稼ぎにくいですが、長期的に見れば「労働から解放される道」になるのが魅力です。
3. 副業(小さく始める)
いきなり独立や起業はハードルが高い、という方には 副業から始める 方法もおすすめです。
こうした活動は最初は小さな収益でも、積み重なれば受託の代替になり得ます。
私自身もブログを書き続けてきたことで、案件の相談や広告収益が入るようになり、結果的に「受託に頼らなくても生きていける」状態に近づけました。
選択肢を広げることが未来を変える
受託開発だけがエンジニアの道ではありません。
自社開発、プロダクト開発、副業などを組み合わせることで、「時間を切り売りしない働き方」 を実現することができます。
まとめ:受託開発はやめとけ。でも…
ここまで「受託開発はやめとけ」と言われる理由を、体験談や事例を交えて解説してきました。
振り返ってみると、受託開発の最大の問題は 「労働を資産に変えられないこと」 にあります。
どれだけ頑張っても納品した瞬間に手元には何も残らず、常に新しい案件を探し続けなければなりません。
本記事で取り上げたポイントを整理すると
テーマ | 内容 |
---|---|
受託開発の現実 | 要望が膨らむ、自由度が低い、納期に追われる |
やめとけと言われる理由 | 単価の限界、クライアント依存、成長の頭打ち、資産性がない、精神的に疲弊 |
やるなら工夫すべきこと | 契約の明確化、単価の安売りをしない、複数クライアント、発信で集客、学びを資産化 |
受託以外の選択肢 | 自社開発、プロダクト開発、副業 |
それでも受託開発を選ぶなら
受託開発そのものが悪いわけではありません。
むしろ「スキルを実務で試せる」「営業力や交渉力を鍛えられる」という点では、独立初期に良い経験になることもあります。
ただし、そのままずっと受託に依存してしまうと消耗する一方です。
「どう出口を作るか」 を意識して取り組むことが大切です。
最終的な提案
- 受託は「経験と生活費を得るための一時的な手段」と割り切る
- 並行してブログや副業、自社プロダクトに挑戦し、資産性を積み上げる
- できるだけ早く「労働から資産化へのシフト」を意識する
この流れを意識すれば、受託開発で得たスキルや経験を無駄にせず、より自由度の高い働き方へ進むことができます。
結論、「受託開発はやめとけ」と言われるのは、そこにハマりすぎると未来が見えなくなるからです。
ですが、受託を通じて学び、その学びを次のステージに活かすことができれば、決して無駄な時間にはなりません。
大事なのは「受託をやるかやらないか」ではなく、「受託をどう位置づけるか」 です。
あなた自身のキャリアの中で、賢く活用していきましょう。